生物と無生物と教師のあいだ

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教師 一番うまい発泡酒をきめようじゃないか

教師に関するいろはにほへと

誰も知らない夜の教師

季節は流れ、いつのまにかふみくんと出会ってから1年が経っていた。
僕らは2年生になった。
ふみくんと僕は同じ3組で、名簿順は1番と2番。
寮の部屋割はクラスの名簿順なので、またまた同室。
新しいクラスで迎える新年度。新学期。教室に入ると、またまた同じクラスの風間とヨコが「よろしく~」と近寄ってくる。
座席も名簿順なので、廊下側の一番端のふみくんの席の後ろに、僕は座る。ふみくんも座る。
「やったね。同じ部屋で」
風間がウィンクする。
「おれらのおかげやで」
ヨコがドヤ顔をした。
風間とヨコのおかげがどうかはわからないけど、僕とふみくんが同じ部屋になるために、二人が動いてくれたのは間違いなかった。




1年生の秋に、僕らは進路のコースを決めなくてはならなかった。
2年になると、クラスは進路によってコース分けされる。特進コースが2クラス。標準コースが1クラス。
特進は、国公立大学や、難関私立大学を狙うコース。センター試験対策もばっちりとかいうクラス。
標準は、まあそれほど頑張らなくていいクラス。
僕らは落ちこぼれではなかったが、秀才でもないし、それほど頑張って勉強するタイプでもない。向上心も特にない。それに、家はそこそこ裕福。下宿しながら私立大学に通わせてもらえるぐらいは出来る。
教師は、《希望者が定員をこえる場合は成績の良い者から優先になるから、特進コースに進みたいものは勉強を頑張るように。さもないと標準コースに行くことになるぞ》と生徒たちに告げた。
《あんなんに煽られたらあかんで。まるで標準コースが落ちこぼれみたいな言い方や。あれがあいつらのやり方や
とヨコは言った。
《 学校側は実績が欲しいんだよ。おれたちは1期生だからね。でも、優秀な連中に混じって受験勉強に苦労するよりも、日々の勉強の限られた範囲をそこそこ頑張って、評定そこそこ取って推薦もらった方がラクだよ?  ギリギリまでセンター試験の勉強するなんて出来る? 》
と、風間は言った。
特に何にも考えていなかった僕とふみくんは、色々考えている二人に感心した。
《それにな、標準クラスは1クラスやから、おまえらが同じ部屋になる確率が上がるで?》
1年次のクラス分けは完璧なあいうえお順だった。
1組1番、相田。
2組1番、有岡。
3組1番、生田。
1組2番、一宮。
……続く。
《有岡と、生田が特進に行けば、君たちは標準クラスの1、2番だから、同じ部屋になれる》風間が言った。
《有岡も生田も優秀やから、特進に進むやろうとは思うけど──おれらみたいなこと考えとったら危ないなあ》
《大丈夫、作戦を考えた。特進に進むのがすごいって、やつらを洗脳すればいいんだよ》
風間がニヤリと笑った。
《どうやって?》ふみくんが尋ねた。
《簡単だよ。自尊心とか、競争心をくすぐればいいのさ》
風間の作戦は単純だった。
とにかく、有岡や生田の前で、特進はすごいなあ、特進に入れたらいいのになあ、でもおれは無理かもなあ、って言いまくるというもの。
そして、実際それをヨコと風間は実行した。食堂で、放課後の活動で、トイレで、廊下ですれ違う時に。
もともと、優秀な生徒には教師が特進コースを薦めただろうから、作戦自体はどこまで効果があったのかはわからない。
だって、特に優秀でもない真ん中ぐらいかと思われる僕と風間も、希望調査書に《標準コース希望》にまるをして出したら、呼び出されたぐらいだから。
《最初から楽な道を選んで、どうするつもりだ。もっと頑張ろうとかいう気はないのか!》教師はそう言った。
 生田と有岡がもし標準を選んでとしたら学校側から説得されただろう。
(ふみくんと、ヨコに関しては、知らない。呼び出されたとか、そういう話しは聞いてない)
もうひとつ、標準コースを選ぶことについて、風間はこう言った。
《標準選ぶと、あいつとも同じクラスにならないから安心だよ》
その時、ふみくんはそばにいなかった。
《あいつって?》
《球技大会で2組のエースアタッカーだったやつだよ。あいつの成績、校内でトップクラスだからね。特進コースに間違いない》
どんなやつだったか、僕はすっかり忘れていたし、何が安心なのかもよくわからなかった。
《そんなやつ、覚えてない》
僕が言うと、ほんとに興味ないんだね、と風間は笑った。
「色々、ありがと。おかげでカノと同じ部屋になれたよ」
ふみくんは、新しい教室で、ヨコと風間に言った。
とにもかくにも、また4人同じクラスになったわけで──僕はうれしかった。

同じメンバーで、また同じ教室で過ごすとが出来るなんて。
ヨコと風間は、作戦のせいで〈特進コースにすごく行きたかったけど行けなかった人〉みたいに誤解されてるかもしれない。そう思うと、僕は二人に悪い気がした。
でも、きっと二人は気にしないんだろう。
「なあなあ、4人でいちゃこらする作戦、まだ続行した方がええの?」ヨコが笑って言った。

そんな風に話していたら、
「一宮君……えーと、それからみなさん」
僕の後ろから、一人の生徒が声をかけてきた。
振り向いた。
他の3人も、そいつに注目する。
「同じクラスだね。どうぞよろしく」
そいつは背が高かった。まあ、僕が椅子に座っているから当然なんだけど、僕はそいつを見上げた。ハ虫類みたいな、少し離れ気味のつり上がった目が僕を見ていた。
「誰?」
そう言いながら、僕はぼんやりと思い出していた。
《今度、ぼくにトス上げて欲しいな》
球技大会のバレーボールで、2組のエースアタッカーだったやつ。
試合の後に、僕にそう言った。
あいつ?
「ぼくは、潮田。どうぞよろしく」
そいつは、にっこりと笑った。
 ※ 『楽園』の〈潮田〉は相葉さんでしたが、今回の〈潮田〉は、背が高くて、ハ虫類みたいな顔の人って感じで、好きにイメージしてください。


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